わたしのひとり会

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新潮講座『新潮社の校閲講座』参加レポート

 みなさんは新潮社がカルチャーセンターを運営しているのをご存知でしょうか。その名も「新潮講座」。神楽坂でやっています。なかなかニッチな内容の講座が多い中、わたしは「新潮社の校閲講座」に参加しました。校閲畑40年の井上孝夫さん(新潮社校閲部の前部長)が講師を務めます。新潮社の校閲部といえば業界内外を問わず有名ですよね。

 

matome.naver.jp

 

 わたしも新卒で校閲職につき、早〇年……。他社の校閲がどんなふうに仕事をしているのか知りたいと思い、この講座に参加しました。いまどき自社で校閲を持っている会社は減りつつある一方で、ドラマ「校閲ガール」の影響もあり、注目されることも増えてきた仕事です。さて校閲業界の雄・新潮社の校閲講座はどんなものだったのか、レポートします。

 

 

「新潮社の校閲講座」の構成と概要

  講座は前半3回と後半3回の2部構成です。月1回(火曜)18時半~20時に開催されていました。参加人数は30人程度で、基本、満席です。申し込みは急いだ方がいいでしょう。前後半でそれぞれ申し込む必要があります。後半だけの参加でも、ついていける内容です。

 そうと言われたわけではありませんが、前半3回に参加している人は、一般よりも早く後半に申し込めるようになっていると思われます。

 

 全体を通して注意しておきたいのが、この講座は今後、内容が変更されていくかもしれないということです。申し込み人数がかなり多かったようなので、会場を変更したり内容を変えたりする可能性が大いにあると思います。まだ始まったばかりの講座のようですので、きっとこれからブラッシュアップされていくでしょう。

 

前半3回は「校閲のお仕事紹介」が多い

  前半はほとんど「校閲ってこんな仕事」という内容です。毎回、お手製のレジュメが配られます。(味わい深い手書きイラスト付きで、どことなく心温まるレジュメです)

 第1回は、校閲とはどんな仕事なのか、校閲者はどんな人間なのか、といった基本的な内容です。ちょうど校閲ガールをやっていた時期でしたので、「校閲ガール」と現実の校閲の違いについても話していました。また、講師は新潮社の前校閲部長ですから、実際にあった原稿の間違いなど出版社のちょっとした裏話が聞けるのは楽しいです。

 第2回は、こんな時に間違いが発生する、という話。「誤植を見つけて、しめたと思ったとき」「小さい部分に気を取られているとき」など、校閲をしたことのある人なら誰しもギクリとする内容です。やはり、ミスの起きやすい場面ってどこも似たようなものなんだな、と気づかされます。

 第3回は、新潮社の校閲風景。新潮社での具体的な校閲の工程を教えてもらえます。これまでの内容よりは、少し実務的になります。

 いずれの回でもちょっとした練習問題を解いて、答え合わせをします。また、講師が新潮社で使っている資料、文献を持参してくれるので、講座が終わった後に自由に手に取ってみることができました。ファンにはたまらないサービスですね。

 

後半3回は校閲の技能向上にも役立ちそう

 後半はぐっと実践的な内容になります。

  第4回は、原稿合わせや字体などについて。前半は「校閲とは?」の話でほとんど終わっていましたが、ここからは校閲作業の進め方を具体的に教えてくれます。「まずは体裁の確認」「単純な打ち間違い、組み間違いに気を付ける」「言葉の使い方の正否」「内容の矛盾」など、原稿を読むときのポイントをチェックします。また字体についての解説もありました。実技として手書き原稿とゲラを突き合わせる作業をし、答え合わせもしました。そしてこの回からは宿題も出されます。(私は宿題を忘れましたが、なんとかなりました…汗)

  第5回は、素読み、調べものについて。校閲者ならこの回だけでも出てみたい、と思うくらい肝の部分ですね。調べものの基準や調べ方、参考資料などについて解説されました。また旧仮名遣いについての話もあり、大変勉強になりました。実務文書では登場することはないですが、ふとした時に必要になる知識なんですよね。ですが、どこでどう勉強したものか、頭を抱えることがあります。この講座ではなんと、主だった旧仮名遣いの一覧資料を配ってもらえました。これは便利そう~。

 第6回は、翻訳校閲。翻訳小説の校閲の問題を解き、その際に原典の英文も渡されます。校閲は日本語を基本としますが、やはり語学力はあるに越したことはないんだなあと、暗澹たる気分になりました(^-^; そして最後には修了証書をもらいました。

 

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こんな人におすすめしたい

  校閲って興味があるけど、どんな仕事なのか知りたい。私に向いてる仕事かどうか知りたい。日本語、本、出版、新潮社に興味がある。こんな人には前半3回がおすすめです。一方、プロとして校閲技能を磨きたい、仕事で校正などを頼まれることがある、といった人には後半3回がおすすめです。もちろん6回通しで受けても良いと思います。

 「校閲の仕事を得たい」。こう考えてこの講座に参加する方も多いかと思います。私が思うに、この講座を受けて直ちに就職や受注に有利になるかというと、微妙な気がします。やはりカルチャーセンターの講座であって、実務者を一から育成するための講座ではないです。もちろんプロが受けても勉強になることはたくさんあると思います。

 わたしは他社の校閲について知ることが目的だったので、大いに満足でした。私が新人時代に受けた教育ともかなり違い、新たな知識を増やすことができました。また、どんな場面の校閲にも共通する事柄がたくさんあることも分かりました。「ミスが起きるのはこんなとき」「校閲に向いている人はいない」「終わらない勉強」……。

 

 活字文化とともに育った職業である校閲が、ネット時代のこれから、どうなってゆくのか不安はあります。いかんせん不景気では真っ先に削られる分野です。ですが正確な情報、正確な表現、分かりやすさが求められる時代に、なくてはならない職業であると信じたいです。

 

www.shinchosha.co.jp

 

余談

 ① 校閲とAIについて研究している人っていないのでしょうか。AIに小説や記事を書かせる、という研究は進んでいるようですが。そういった講演などがあれば、ぜひ参加したいです。

 ② 自分の書いたものの誤字脱字はけっこう見落としがち…その辺はご勘弁を…