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好きな言葉を採集

短歌、俳句、川柳、雑記

黒部峡谷にて 2


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名も読めぬ駅で列車を待つ我に 心強きは古ストーブの火

 

旅も果て空が紅葉に染まりけり

 

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 本当は誰かを誘おうかとも思ったが、平日の中途半端な日に遠路はるばるトロッコ列車に乗るためだけに来てくれる人はおらず、一人旅となった。私は旅行好きでも写真好きでも、そもそも短歌や俳句好きでもなかったのだが、日々の嫌なことから気を紛らわせるために始めた。就職するまでは自分の進路に悩んだことが一切なかった私が、今はこの先をどうしたいのかさっぱり分からなくて困っている。休みの日にどう過ごして良いのかすら分からなくなるときがある。

 トロッコ列車は始発の宇奈月から終点の欅平まで、ずっと川沿いを走る。そのため途中途中に小ぶりのダムが現れ、白いしぶきをあげて勢いよく放水する光景を見ることができる。嘘みたいなエメラルドグリーンのダム湖が、太陽に照らされてきらきらと光る景色などは、思わず歓声をあげてしまった。そうは言っても、そそり立つ断崖をずっと見せられていると、トロッコの弱々しさと自分の無防備さにだんだん心細くなっていく。そこで突如現れる巨大人工物の豪快な放水は、けっこうな安堵感を与えてくれる。