わたしのひとり会

短歌、俳句、川柳、落語、読書、雑記

晩秋の黒部峡谷にて、いくつか詠んだ

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一人旅見知らぬ空を眺めても  隣に君を座らせている

 

山裾やミニカーの走る見つけたり

 

ストーブの磁力がつくる行きずりの 同心円にやかんの周波

 

 

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 黒部峡谷は赤い鉄橋を渡るトロッコ列車で有名だ。かつてはダム建設の作業用列車だったらしい。トロッコ列車の始発駅も終着駅も深い山中にあり、観光名所と言えるのは、温泉と列車から見える景色くらいだ。だがこの景色の素晴らしさのあまり、作業用列車にも関わらず「ぜひ乗せてほしい」という声がたくさん出たため、その命の保証をしないことを条件に見物客を乗せ始めたのが、現在の観光用トロッコ列車の始まりだそうだ。

 細く暗いトンネルをいくつも抜け、急斜面の山道を這うように登るトロッコ列車に乗っていると、自然の雄大さのあまり私はすぐに心細くなってしまう。たぶん、小学生のときに深夜の山で迷子になりかけた記憶が影響しているのだと思う。しかも今回は一人旅。他人に気を使わなくて済む気楽なものだが、その日の客車には私しか乗っていなかったものだから、美しい景色への感動と心細さが交互にやってくる、見た目とは裏腹にせわしない心中だった。