わたしのひとり会

短歌、俳句、川柳、落語、読書、雑記

NHK短歌 「袋」 石垣佑磨

NHK短歌 2月放送「袋」

 

選者:小島なお
ゲスト:石垣佑磨
司会:剣幸

 

 今回のゲストは石垣佑磨さん。小島先生も仰っていましたが、かっこいいだけじゃなくて声も良い…。「イケメン俳優がいっぱい出てくるドラマとかに出てそうな人の一人」程度の印象しか持っていなかったのですが、改めて見るとやっぱりかっこいいな!(笑)女性陣はかなり浮き足立ってましたね。

 今回のお題は「袋」。どんな袋が出てくるかなあと思ったら、手袋、ぽち袋、手提げ袋、いろいろ出てきてました。

 

荷物とはこのようなもの。
今日明日食うものばかり袋に提げて
(生沼義朗)

 

 小島先生が解説していましたが「食う」というちょっと荒っぽい表現にこの歌の良さがあるようです。人生における荷物、大げさに言って「業」みたいなものは、丁寧な言葉では表せないんだと思います。
 今回の穴埋め問題コーナー、楽しかったです。テーマは人名でした。

 

地球から一番遠き星の名にふさわしきかな○○○○○○○○

 

 剣さんは「ジェームズ・ディーン」、石垣さんは「マニー・パッキャオ」、えりちょすは「オードリー・ヘップバーン」。石垣さんはかなりパッキャオがお好きなようで、良い声で熱く語ってました。私は誰だかよく知らなかったのですが、政治家かつプロボクサーのようです。答えは「マリリン・モンロー」でした。ちょっと難しい(^^;)

NHK俳句 「野焼」 宮崎美子

2月放送 NHK俳句「野焼」

 

ゲスト:宮崎美子
選者:正木ゆう子
司会:岸本葉子

 

 今回のゲストは女優の宮崎美子さん。正木先生と同郷の、熊本出身だそうです。今回の番組はなんともいえぬ、のほほんとした雰囲気がただよっています。
 「野焼」とは何なのか。山などを焼いて、その灰が肥料となって再び草木が育つ、という。いまでは火事の心配や二酸化炭素の排出だとかで、以前ほどは行われていないそうです。

 

日をめぐり炎めぐらせ草の春

 

 宮崎美子さんの句です。正木先生が「草の春」というフレーズを非常にほめていました。「もういっそ野焼の句ではないということにしてしまいましょう」なんて仰っていました。
 野焼を実際に見たことのない私には、これで句を作るのは難しそうです…。

 次の選者が発表されました。


今井聖、高柳克弘、夏井いつき、櫂未知子の各氏です。
俳句小説「ライク・ア・ローリングストーン」の作者、今井聖さんが登場。とても楽しみです!句集を読んだことはないのですが、この小説はとても面白かったです。

冬に詠んだ短歌 短歌の目

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短歌の目、参加します。よろしくお願いします。 

 

 

1. 洗

洗いたてあなたのシャツが乾くまで愚痴の一つも聴かせてやるわ

 

2. 鬼

いま鬼に舐められた我めまいしてこれが怒りという感情か

 

3. 入
ポケットの多さのせいで入れるべき物を持たないことに気付いた

 

4. チョコ

寒さ増すほどに板チョコ割る音が1オクターブずつ上がってく

 

5. きさらぎ

きさらぎの欠けたる二日か三日分せめて寝坊は許してほしい

 

 


東京の高層ビルの足下の池の端で亀何の夢見る

 

 

tankanome.hateblo.jp

冬に詠んだ歌と句 小石川後楽園にて

東京ドームのすぐ隣にある小石川後楽園の梅は七分咲き。カメラを担いだ人たちが思い思いに写真を撮っていました。

 

 

無機質な巨人に覗き込まれつつ小梅を愛でる後楽園かな

 

 

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バズーカのようなカメラに梅一輪

 

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私より撮られ慣れてる鴨たちの退屈そうに毛繕いする

NHK短歌 「苦しむ」 島谷ひとみ

2月放送 「苦しむ」

選者:坂井修一
ゲスト:島谷ひとみ
司会:剣幸

 

 今回のゲストは「亜麻色の髪の乙女」でおなじみの島谷ひとみさん。今回のお題は「苦しむ」だったからなのか、入選歌はどれも心に響きました。

 

せっけんが
つめにはいった
ときほどの
まろい苦しみ
あなたのウソは

 

 若い方が作ったそうです。爪に入った石鹸のたとえが、絶妙に共感を呼びます。

 

有無という
アントニムだけ?
そうじゃない
生む苦しみと
生まぬ苦しみ

 

 この歌は島谷さんが推していました。友人は子育てに忙しい時期だけど、自分は独身。どちらの言い分もすくい上げています。私も独身で、まだ友達も結婚していないけれど、きっとこんな風に感じるときが必ず来るんだと、身につまされました。短歌というと繊細で優雅な文芸という印象が強いですが、人生の苦しみ、人間のドロっとした感情、そういったものも織り込めるんだと再認識させられます。


 坂井先生が紹介した今回の歌も、とても印象に残りました。

 

吾と同じ
目線の高さ
柵ごしに
駝鳥は夏の
憂ひを運ばず
(大塚寅彦)

 

 みなさんは駝鳥を目の前で見たことがあるでしょうか。私は高校時代、学校の隣の付属大学が持っていた飼育小屋で駝鳥を見たことがあります。私よりも少し高い身長、一回り大きな体格。キリンや象のように自分よりもずっと大きな動物だと、遠くから眺めることができますが、妙に近いサイズだと、人間と鳥という違いがよりいっそう際だつ。そういう不思議な感覚になったことを思い出しました。
 きっと檻に入れられている駝鳥。同じ目線の高さなのに、私と違って憂いを運ばない。駝鳥をすぐ目の前にしたことのある人ならきっと、この歌に共感すると思います。…こんな歌を詠めるようになった良いなあと思わされます。

 

 恒例の坂井先生からゲストへの歌のプレゼント。今回はこんな歌でした。

 

あそぶ髪
舞ふ歌姫の
いやさかを
ロザリオの玉
野薔薇 祈らめ
(坂井修一)

 

 折り句はもう分かりますね。頭文字と末尾の文字をつなげて読むと「あまいろのかみのおとめ」です。こんなに長い折り句は初めてだそうです。後ろの2句が意味が分からん、と思わないこともないですが(笑)、これだけ仕込むのは相当な技術なんだろうなあ…と思わずにはいられません。

 

4月から選者が変わります。
永田和宏、大松達知、黒瀬珂瀾、佐伯裕子の各氏。

 

道灌と山吹伝説

孤鞍雨を衝いて茅茨を叩く

 

これは漢検準1級の読みの問題です。「茅茨」をどう読むかわかりますか。答えは「ぼうし」です。粗末な小屋、といった意味です。

 

この問題文、どう見ても漢詩から来ているようです。調べてみたら、太田道灌の作でした。漢検準1級にもなると漢文の勉強に近くなるんですね。やはり日常生活で使う言葉がほとんどを占める2級とは別世界です。

 

孤鞍雨を衝いて茅茨を叩く

少女爲に遺る花一枝

少女は言わず花語らず

英雄の心緒亂れて絲の如し

 

太田道灌は雨の中、一人で馬に乗っている。粗末な小屋を見つけ、その戸を叩く。小屋からは少女が一人出てきた。雨具を借りたいと言う道灌。少女は小屋へ戻り、盆に一輪の花を載せて持ってきた。鮮やかな山吹の花だった。少女はうつむいたままその盆を差し出す。軒先から雨粒が滴り落ちる音が静かに聞こえる。道灌には意図がわからず、花とうつむく少女をただ見つめるばかりだった。少女は少し震えているように見えた。道灌は困惑したまま山吹を手に取り、何も言わずその場を立ち去った。

帰り着いた道灌は臣下にこの話をした。すると臣下は道灌に古い和歌を一首教えた。

 

「七重八重花は咲けども山吹の実のひとつだになきぞ悲しき」

 

少女は蓑一つさえ貸すことができなかったのだろう。道灌は自分の歌道に暗いことを恥じた。そして、何も言えず立ち去った自分を恥じた。

 

この話は古典落語「道灌」にも登場します。落語の中では、道灌は単に自分が歌道に暗いことを恥じて、のちに研鑽を積んで歌人としても有名になる、という解説がされます。

 

雨の降る中で立ち尽くす武人と花を差し出す少女。その緊張感がもたらす結論は「歌道に暗かった」よりも、もっと違う何かであってほしいと私は感じました。

 

(再掲)

冬に詠んだ歌と句 六義園にて

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老梅や恥ずかしそうに灯りおり

今は無き川の端に立つ老梅や

 

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ビル街のゆらりと映る池の端の渡月橋へと歩み出す君

渡月橋わたりきったら今度こそインチキをせず生きてゆきたい

ビル街の映る水面を泳ぐには優しい形の水鳥が向く

水鳥の蓬莱島に腰掛けておおあくびする木曜の昼